ライバルと入試

ライバルと入試

大手塾は”多くの子供達が競い合い、刺激を受けるから頑張れる”。
家庭での勉強時間に比例して合格が決まる、中学受験は親で決まる。

入試で合格した後、親子であいさつにこられ、塾であれやこれや談笑するのですが、その時、席を並べ一緒にがんばった仲間についての話、ほぼ出ない。塾は、同学年で捉えているので、少しはたずねてくれないかなと思うけれど、帰り際に一言あるかないか程度。入試は個人的なものだということがよくわかる瞬間です。
一緒に入試を頑張る、という雰囲気はつくれても(入試会場での握手会やハチマキで気分をあおるなど)、入試は個人技でしかない。そのことを忘れ自分を見つめることができなかった子たちは、気分で乗せられ、わけがわからないまま入試が終わる、という場合も…。

過去、こんなことがありました。
家で弟とケンカするようになった。「どうしてひどく当たるの?」と聞くと、ぼくもストレス受けてる、と泣き始める。学校で同じクラスの遊び仲間、ぼくには仲間扱いして遊んでくれるのに、隣のクラスの友達をその子が平気でいじめるんだ。自分には親切なのに、その子には別人のようにいじめる、それを見ているのがつらい、どうしたらいいのかわからない、と。

加害者はS塾の子で、普段からクラス分けで競い合っている子。ヒエラルキーの上位を目指すシステム。上位が定位置の子は、経験に裏打ちされた自信・自己実現ができていて、ライバルはいい刺激、自分を見失うことはない。中位以下の子は自分もそうなりたい、下位でいる自分を認めたくないし、否定したい。そういう善意の子ほど平気で…、というか積極的に自分の価値観に合わない下の存在を否定しにかかる。悪いことをしているという意識はない、価値観がワンチャンネルであることが、そうさせている。
善意の人ほど、悪いことを平気でおこなうという指摘は、最近あちこちで言われ出している。大手塾には、いじめを誘発するメソッドがあるのかも…。
(「翼の翼」という本。中学受験ど真ん中が詳述されています。)

当塾では、過去に四谷偏差値73に進学した子がいて(当塾のみの指導、第1志望でなく過去問は全部ダメだったチャレンジ校への合格、39度の発熱)、その子が入試前に過去問をシャカリキに解いている最中、横にいた補習の子が話しかけ、相手してくれないのでしきりに文句を言われる場面がありました。四則計算を指折りやるような子で、能力差ははなはだしかったですが、上下関係はまったく生じない。価値観が何チャンネルもあり、勉強だけがすべてではなかったから…。入試前でも、その子は公立進学の子と学校で遊んでから塾に来て、ほぼ塾でしか勉強せず、暗記も残り勉強して済ませてました。(当時は、多くの保護者から宿題をちゃんと出してくれと言われ、こんなに家で勉強しなくていいのか、とよく疑問を持たれました。今は、当塾のポリシーが入試で結果を出しているので、あまり言われないですが…)

当塾は四谷の準拠塾。テスト会員はランク分けされる環境にあります。でもヒエラルキーは生じない。ランクが上になっても下になっても、当塾から口を出すことは皆無。
Sの子が周囲にマウントすることはなく、Aの子が卑屈になることもない。また、成績で後から入った子に追い抜かされた場合、多少は挽回のため頑張る様子が見て取れるけれど、性格を変えるほどの真剣さはなく、以前とあまり変わらず。ただ、入試前になると、真剣さが加わり、性格が一時的に変化することは何度も目撃しています。
やはり、入試は個人的なイベントで、6年間の将来の身分を決める入試に対しては自分を真剣に変えられる。けれど、ライバルに対してはそこまでのしんどい変化をしたくない、という感じ。単にライバル向けの勉強対策は、底が浅い…。
入試を通して、子供が自分の性格を乗り越え、人間的に成長したという談話をよく目にしますが、まさにその通りのことが起きます。