幼稚な子の方が伸びる

幼稚な子の方が伸びる

IQが120を超えるようなずばぬけた脳は生まれつき大脳皮質が厚いわけでなく、むしろ、7~9歳の時は平均よりも薄い(つまり平均より幼稚に見える)。
その後、13歳までに一気に肥大化し立派な皮質になる。 …アメリカ国立衛生研究所:ショー・グリーンスタイン博士の研究(脳にはみょうなクセがある:池谷裕二著)

これは、塾で教える状況とよく合っている、と感じます。
4年生で教え始める時、幼稚で興味が豊かな子はよく脳が大きく成長する。加えて性格に緻密さがあれば、5年後半ぐらいから試行力がとがってきて、大人が舌を巻くほどの
生命力みなぎる速さで作業できるようになる(大人の先生はかなわない)。1年前はあんなに視野が狭く、変なクセがあって幼稚だったのに…、と驚くのです。
そういう子は難関校への扉が開くことになります。

逆に、他の子より大人っぽく、大人受けするアピールのできる子は、小さい大人としてある程度出来上がっていて、つき合いやすい。
しかし、新しいことに興味を持ちにくく、今までにない単元を受け入れにくく保守的。勉強してその通りにできたことでも、日にちが経つとなくなっていることが多い。
出来上がっているといっても、経験で自ら得た栄養ではなく、周囲の人への忖度なので、表面的。そういう性格の子は成長しにくい。

7~9歳は小学1~3年生。この時点で大脳皮質が厚い子は、例えばお受験で力を発揮した子に多いと思われる。大人に忖度する能力が高く、公立の子より成長が早いように見える。お受験では、協調性=相手を思いやる心・創造力と表現力・よい生活体験が問われる。それらは忖度目的でなければ好ましい目標なのだけれど、大人が評価して是非を決めた瞬間に、評価を目指して子供がすり寄る対象になってしまう。
お受験で入学後、ダメな子にならないよう学校の求める同調圧力にすり寄り、退学がある怖さとの板挟みで、私立小の多くの子供は忖度することに脳のエネルギーの大半を使ってしまう。幼児期にあった協調性は新たな人生経験でメッキがはがれ落ち、善意の忖度疲れで、自分のためにエネルギーを使うヒマがない。

塾では、5~6年ぐらいになると、幼稚だった公立の子が、私立の子を追い抜いていく状況が見られる(塾内で比較した場合)。幼稚に見えた子は、脳のエネルギーの大半を自分のために使う。子供の脳は柔軟で、それが本物の欲求であれば、脳は必要に応じて神経回路を増やし級数的に成長してゆく。
(むろん、個人差が大きく、私立小でも強い個性を発揮してよく成長する子もいるし、公立で幼稚なままの子もいる…。また、私立小といってもいろいろで、大人に忖度せず主張しなさいという学校もあり、過去には理科室に立てこもって先生達に自分たちの主張を通した小学生の猛者たちもいました。…しかし、それは例外的。)

今までの経験から、小学受験組と中学受験組がミックスされる学校の出身者(同業者や保護者)から、小学校から上がってくる子は”できない子ばかり”という話は山ほど聞かされても、その逆は聞いたことがない。お受験組の出身の人からは、その学校に通ってたけれど、あのすごい人たちとは違うんです、私は平凡なんです、と聞かされたこともある。

国立系の一貫校の高校への進学テストで、小学校受験組の子はほとんどいなくなる話は何十年も前から変わらない話。公立小学校だと10%ぐらいは上位校以上に進学するという印象があるけれど、それよりだいぶ下という感じ。

脳神経回路が爆発的に増えるには、忖度をさせないことが必要条件ではないか、と当塾は感じます。例えば、4年時、”あいさつ”をしないでヌーッと泥棒のように入ってきて、”あいさつ”をしないで気持ち悪く帰っていく子がだいたい3割前後います。ただ、そういうマイペースの子のほうが、5年ぐらいでグーンと試行力が伸びて驚く、という感じがあります。忖度しないから自分の欲望に忠実で、勉強にも忠実になる。ま、あいさつはしないと気持ち悪いので、折を見て、”あいさつ”は”あなたと敵じゃない・嫌いじゃない”というサインだからさせるように促しますが…。塾に慣れ、6年にもなると、無愛想な先生に心のこもったあいさつをしてくれるように変化していきます。初めからあいさつがきれい過ぎる子は、勉強もきれいにやろうとし、本当の心がこもっておらず挫折することが多い。

お受験に失敗した子も、かえって良かったんじゃないかという励みになれば幸いです。
私立小に入れた子も、忖度の圧力を上手にいなし、個性にエネルギーを使うことをおすすめします。