2022年入試リポート

2022年入試リポート

2022年の入試をリポートします。当塾としては4名満席の学年。

当塾が大手と異なる点は?
中学入試の人気校の倍率は2~5倍ぐらい。
大手の合格者数は華々しく多い。合格倍率も平均値に近いと仮定すると…、2倍だと合格と同数のダメだった子たちが背後にいて、3倍だと合格の2倍の不合格者が背後に
存在する。(合格者からは、次の受験生が参考になる点はあまり得られない。むしろ落ちた子からより多くの教訓を得ることができるが、一般にそういう情報はあまり出回らない。)

当塾の2022年の不合格校は2校。
1月の偏差値57の学校では、入試に対してなかなか心構えができなかったことが主因。
2月の偏差値70の学校では、学校に行く電車で友達と偶然出会い、着くまで話し続けた。本人が「まずい、なんかゆるんじゃったかも…」と言っていたとのこと。
さらに、入試会場で、また違う友達が近くの席にいるというサプライズがあり、追い打ちで気が緩んでしまったもよう。心構えができなかった。
前日、当塾での前年度過去問演習は、算数の書いた答えは全て正解でミスはゼロ。自分を見つめる心構えができていた。
当日は、10~11月ごろのミスの多かった素の状態に戻る(もともとCの真ん中ぐらいの子、10月ごろは難関校の問題に歯がたたなかったが、2ヶ月ぐらいで試行が尖るようになり、入試前にSに浮上する)。70の算数の[2]、ちょっとしたミスで3問全て落とし不合格。 …これでわかるのは、試験場では浮かれてはいけないこと。自分自身の過去の欠点と向き合わなければならない。
…当塾では落ちた主因を分析し、後続に役立てる。他の13校(4名で)にはすべて合格する。

「みなさん優秀なんですね~」と表面的に言われる。もともとできる子だと思われがちだけれど …ちょっと違う。

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当塾のキャッチは「やる気のある子は集まってこい」
裏を返すと、そういう子がなかなか集まってこないから…。
当塾は2月の入試が終わってから新4年生の受け入れを開始(入試直前に新入生の接待をする余裕は個人塾にはない)
…が、やる気のある子はすでに1強と言われるような塾に入っていて、当塾にはまず入ってこない。

当塾に入ってくるのは、競争は嫌でマイペースで勉強したい子、習い事をやめたくない(大手は学年上がると週5~6日塾に行くという状況になる)という2大潮流の子たち。2022年の子達もみなその範疇。3月から入塾したのは1名のみで、上の子が過去問で1勝10敗なのに61の学校に合格した(よく公園で遊んでいて受験組じゃないと思われていた)その下の子。 …4月から、その年全ての受験校に当塾から合格した子と同じマンションに住む、マイペースな子が1名入ってくる。 …4年11月にスポーツと勉強を両立したい子が1名転塾してくる。 …5年になってから塾(入試)の勉強皆無の子が1名入るといった具合。

…他塾で早い時期から勉強している子より、何も知らない子の方が当塾には指導しやすい。(ただし、5年までに始めないと入試には間に合わない)
…聞くところによると、大手は3~4年の頃は楽しい授業で生徒を乗せ、塾が楽しい。5~6年になると課題量が大きく増え、上位生は楽しい状態を維持できるが、中~下位層は課題が大変で、家庭内で不協和音が響き、塾に行きたくない子が増え、勉強から撤退しがち…。(「翼の翼」という本が、中学受験ど真ん中を詳述している)

当塾は、4年の頃あまり食べやすくない(自分の足で歩かせる)ので、塾に行きたがる子は少数派かも…。子供をおだてることがない…、しかし無理強いはしないので
まったりした空気感。そのうち、塾に慣れてきて、自分の足で歩くことが当たり前になっていく。…その後、5年ぐらいから自己実現する成果が出始め、進んで塾に通うようになる。(大手は講師に乗せられる子が居心地良いが、当塾では自分の個性を発揮できる子が居心地良いという感じ)
…2022年の子たちは、6年後半に全員が最高の成績となる。9月末まで週2回の指導で、算数の宿題も出ず…疲れる子はおらず、成績が上がり調子になり塾に行くのが楽しい。

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どの程度まで思考力が上がるのか。普通の大人は難関校の問題に触れないので、2022年の西大和学園(合格するも辞退)の問題を例に…。

(1)一般的な解き方のパターンで解けないよう、条件をいじってある。難関校は、本質を調べる力量があるかどうかを工夫する。意地が悪いとも言えるけれど、
問題の構造を調べられる子にはすぐ解けるようになっている。そして、構造を調べたい、という欲求は、教えられた通り、真面目に”ぬり絵する勉強”では決して得られない。

 

(2)離れた長さが2倍。人によるけれど、まず相似形を探したり、同じ長さをくっつけたりする。が、その先がなかなか見通せない。
合格した子は、入試の時間内にはできなかったけれど、入試後に気になって試行して自力で解けていた。

試行=チャンネルの多さと方向のセンスで、難しさは構成されている。…合格した子のしつこく試行したがる傾向は、4年の頃に形成されたと思われる。
当塾は、本人が意味ある試行していれば、満足するまでただひたすら待つ。やり方が遠回りでも途中でダメ出しすることはない。
入塾当初は、指示に従うだけの子だったが、しだいに自尊心が芽生え、自分で解くのが楽しい子に育った。
6年後半になると、4年の頃の楽しさが入試での試行の強さにつながることがよくわかる…。

次は、塾でも何度かやった種類の問題で、飽くなき試行の尖り方がわかる答案。

このような難関校に合格した子の、ピアノ率は9割を超える感じ。ピアノは左右で違う旋律を奏でる必要から、チャンネルを同時並行して走らせる感覚を得やすい。
特に図形の問題で差が出る。加えて、緻密さがあれば、成長は間違いないだろう、という感じがする。

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次はマイペースな子。
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字がなぜ、くにゃくにゃなのか、はじめはわからない。観察するうち、紙から鉛筆を離すのが面倒くさい+うまく指が動かせない、のであろうと推察する。
何が書いてあるかわからなければ、テストの採点不可能だし…、実際、5年からYTテスト始まると、塾で○にした漢字が、YT採点だと×になり、なんでだ?と不満を言う。

算数の線分図も、まっすぐな線がかけない、区切り目のはじめと終わりがズレるのでどっからどこまでか捉えにくく思考のジャマになる。(本人だけはわかっているもよう)

この状況だと、2年先の入試を考えると絶望的な感じ。しかし、勉強に感情を乗せられるという長所があることがわかってくる。自分の力でできると”雄叫び”を上げる。
6年までそれは変わらず、動物園にいるみたい! 逆にいうと、雄叫びを上げる気持ち良さがあるから、問題に対して集中する。
こだわりも強く、当塾の指摘をなかなか受け入れようとせず、6~7回も同じことを言わなければならない。
また、変に真面目なところがあり、言葉の意味をフニャ字のまま真面目に調べ上げ、当塾の歴史で1番よくやってたと思う。(他の子は面倒くさがってやらない)
自己実現・楽しさをエンジンにする子が最も強い。絶望と思える状態から、脳の神経回路が級数的に増えていったという感じ。

5年の時、友達とケンカした後(学校で)、一時的にしっかりして、その時だけYTテストの満点を2回取る。6年後半になると、ケンカしなくても自律し、さらに満点2回。
テストで1つのミスもなく満点取るのは難しいが、それを4回も取れた。普段の字はあいかわらずフニャ字だったが、答案だけは別人のようにキレイな字を書くようになり、ちょっと驚き!

そして、入試では、受験した学校にすべて合格し、同じマンションの子と同じ結果に…。(その元をたどれば、その子の紹介先の子は、入試直前に算数14点で57に合格した子、さらにその上の子は、Bランクの成績で68に合格している。)

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(集合写真)

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次は、スポーツと両立するため、転塾してきた子
6年の頃も週3~4日、以前と変わらずスポーツを継続できた。…当塾は算数の宿題が出ない。(2022年度は、入試までピアノ続けた子が1人。過去には12月まで選手コースでやってた子もいる。)

危機感がある時に大きな力を発揮する子。探究心はそれほどなく、答えが合えば満足する。国語のセンスが良く、計算が速くこちらも追いつけない、…が、理科のセンスがとても悪い。
入試前でも”東と西”を間違い、変なふうに覚えてしまったと告白される。”水が蒸発すると熱を出す”とか…気化熱なのに…、”高い場所は太陽に近いから気温が高い”とか…。
ずっとC会員の真ん中ぐらいだったが、6年9月以降Sに2回なる。入試日の2月1日、理科がダメだったと塾に来て言うけれど、理科はまあまあ、算数がボロボロだった。
(”できた”という時は問題が見えておらず悪い、”できてない”という時は見えているので結果が良い、というのは、当塾では常識)

入試では、通常リラックスできるよう受験生に呼吸法をやってもらうのだけれど、この子にやらせると危機感がなくなり、ふにゃっとして、過去問のできが最悪になる。で、しなくていいと指示。緊張感のまま入試に臨んでもらったが、今度は緊張感ありすぎたのか試行が硬直化、普段はチャンネル変えられるような問題でも、悪い時の状態になっている。
(同じ能力の子でも、特に算数はその日の調子で30~70点の変動は容易におきる) …で、冷静になるような言葉かけをして、3日のリベンジで67に合格する。
中でも、理科の出題傾向が変わり、光・音が出たらしい。(他塾のNNコースの子が絶対に出ない単元だからやらなくて良いと言われたという。)
さらに、57の2回目もまったく違う問題だったそうだが合格。

過去問分析して優先順位をつけ効率的な勉強はすべきだけれど、作問者が代わる場合もあり、偏りすぎると残念な結果になる。大手は、出そうな問題をすべてやらそう(覚えさせよう)として、時間が足らず毎日やらせる。
当塾は、全部やらせるのは、はじめからあきらめていて(時間がいくらあっても足りない)、未知の問題が出たとして、子供の側の対応する能力を上げようとする(塾からのダメ出しはそれなりに厳しい…)。毎日やらないから、子供は元気。演習量は大手の半分にも満たないかもしれないけれど、入試問題に柔軟に対応でき、よく合格する。入試が終わっても燃え尽きず元気…。

彼の今後も、危機感があれば、大きな力を発揮すると思われる。

 

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最後に、5年から入塾した子は、当塾の強要しない勉強スタイルが性に合ったのか、楽しそうに通塾する。4年からの内容を2倍速で進めるのは大変だったけれど、そのうちなんとか追いつくようになりYT週テストを受けるようになる。Aでスタート、ほどなくBになったが、6年最後に1回だけCになる。そして、公立中高一貫の60に合格する(2年前にも合格例あり)。公立一貫校には、記述と適性検査がある。10月ぐらいにやらせると、記述ははじめ何を書いたら良いかわからず、ほぼ白紙で点数にならない状態。題材があれば何かしら書ける子だが…。で、自由に書く練習をすべく、当塾の記述プリを10月ごろから始める。

記述の指導は、”なるべく直す箇所を少なく”を当塾は心がける。お手本の記述を勉強(マネ)させるのはナンセンス。それをいくらやっても、自分の文章は書けない…というか、自分よりはるか上の、上手すぎる文章を前に、子供は萎縮して書けなくなってしまう。1~2箇所直せば良いのなら、やる気がでる。記述の指導は10人いたら10人とも直し方が違う。大手は大勢を集めて記述の指導をするというけれど…、どうしてそういうことが可能なのか不思議?

(画像)

その子は、57の学校にも合格するが、進学先は偏差値表に載っていない個性的な学校。試行と体験を十分にさせる学校で、偏差値では測れない魅力があるようだ。保護者の周辺では10人いたら9人まで”どうして60に行かないの?”と質問されるそうで…。当塾の歴史上でも、偏差値が下の合格校に進学するのは3例目。なかなかできることではない。尊敬すべき判断。

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ある保護者のお言葉
先生のご指導力の凄まじさ! もう本当にこの一言に尽きます・・・  バラバラで凸凹な個性の子4人をまとめ上げ、
さらには全員バラバラの個性ある希望校に対応できるのはもう先生くらいしか世の中にいないんじゃないかと思います。(本心で)

2022年度、入試前は勉強不足を指摘することもほぼなく、試行できることは全てやってくるので、指導するのが楽しかった子たち。
世事にうとかった幼稚な子が、社会情勢について考えを言うなど、成長したなあ、と思う場面もありました。
今後は、新たなスタートライン。偏差値を鼻にかけず、自分のやりたい道を探して欲しいと願ってます。

(画像)